アップローズキャリア 尾川直子からのメッセージ

『「文系学部廃止」の衝撃』について(2017.09.26)

 大学受験に小論文が必要な人は東京大学の吉見俊哉教授が書かれた『「文系学部廃止」の衝撃』を是非、読んでください。この本が出版されたときは大きな話題になりましたが、入試でもこれまで埼玉大学、和歌山大学、聖心女子大学、慶應義塾大学の小論文で課題文として出題されています。また、大阪大学や法政大学では現代文の問題で取り上げられました。

 聖心女子大学では2017年度のアドミッションズ・オフィス入試でこの本の67ページから75ページまでの部分が課題文となりました。ここをまず読んだうえで、問題に取り組んでみましょう。問題は聖心女子大学のサイトに公開されています。

 https://www.u-sacred-heart.ac.jp/exam/files/ao17.pdf

 ある受講生と一緒に課題文を読んだところ、課題文の中の大事なポイントはきちんと読み取れていました。しかしながら、小論文を書くとなると論点がぼけていたので、高い評価をつけることができませんでした。その受講生は小論文の中で「文系」と「理系」を区別することに追われていたので、「価値軸の創造」や「変化」というキーワードを落としてしまっていたのです。

 この課題文は「しかし」という逆接の接続詞のあとに筆者の主張が来たり、具体例の前にはほとんど「たとえば」という例示の接続詞を用いるなど、課題文の読解力を試すには最適な文章です。おそらく「課題の理解」という評価項目では差がつきにくいと考えられるだけに、適切に読み取ったことが採点者に伝わる表現を心がけましょう。