「情勢」と「出来事」について(2020.05.27)
警察官を目指す受講生から「情勢」と「出来事」の違いについての質問が来たので、こちらでもお知らせしたいと思います。
ある論文課題に「最近の警察をめぐる情勢や問題点に触れ、あなたが目指したい警察官像について述べなさい」とありました。そして、「最近起こった社会の出来事であなたが最も関心を持った出来事を一つ挙げ、あなたの考えを論じなさい」という課題もあったのですが、最初の課題にある「情勢」と次の課題の「出来事」はどう違うのかという質問です。
「情勢」は辞書では「変化していく物事のその時々の様子。今、物事がどのように動いていて、今後どうなっていきそうかという、状況の流れや方向」とあります。したがって、社会問題だと捉えていいでしょう。社会問題の定義は難しいですが、私は「社会が変化したことで起きた問題」だと思っています。この受講生は高齢者の問題で書きたいとのことでしたが、「高齢者」を「情勢」にフィットさせるとなると、「高齢者の孤独死が多いこと」や「高齢者による犯罪が増加していること」になるでしょう。
一方で、「出来事」はある一点を指します。「スーパーシティ法が成立したこと」「今年の全国高校野球選手権の中止が決まったこと」などです。こちらでも「高齢者」で書きたいとなると、「給付金手続きを装って、岡山県の高齢者からキャッシュカードをだまし取った17歳の少年が逮捕されたこと」のように特定の事件を挙げる必要があります。
新型コロナウイルスについて書きたいという人も多いですね。「情勢」であれば「新型コロナウイルスの感染拡大による自粛要請で非正規雇用者の生活環境が悪化していること」、「出来事」であれば「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が全都道府県で解除となったこと」のように、「動いているもの」なのか「ある一点」なのかという違いを認識しましょう。